願いの行方、黒き焔
著者:自由気儘
「何が……起きてるのよ……」
いつも通りの日だったはずだ。いつものように、仲間達と他愛のないことで騒ぐだけ。至って変化の無い日に突然、‘あの男’――いや、あの少年はやってきた……
「何だっていうのよ……一体……」
「バケモノはどこだ?」その少年は言った。開口一番にそんなことを言う少年に、「は?どうしたって、坊主」と仲間の一人は聞き返す。少年はもう一度、「バケモノはどこだ?」と言った。最後に、「バケモノを差し出すなら、お前達は見逃す」と付け加えたのを覚えている。
「訳が分からない……」
そう言った瞬間、仲間の一人の首が宙を舞った……。
「ならば、虱潰しに一人一人消していくしかないな……」
少年の無機的な瞳を見て、あたしたちは逃げ出した。アレに関わってはいけないことだけは、あたしたちでもよく分かったからだ。……アレが本当の“バケモノ”だということを確信した。
「……ここまでくれば、何とかなるかな」
林に身を潜めてあたしは思った。緊急事態の時、あたしたちはバラバラになって逃げることになっている。分散したほうがみつかりにくいし生存率が上がる。それにあたしたちのやってることがやってることだから、追われることには慣れてて、ヘマをするような間抜けもいない。
「でも、今回はちょっとやばいかな」
今回の追跡者はいつもの国の犬やあたし達を目の敵にする商売敵とは違って、純粋に殺意を持って当たってくる相手なワケで、当然レベルとかも段違いに高くて――
「――ってダメダメ、弱気になっちゃ」
乱れた息を整えて自分を奮い立たせてみた。
「……そういえば、いつから息切れなんてやるようになったんだろ?ふふっ、まるで人間みたい」
「バケモノはどこだ?」、あの少年の言葉。……たぶん、あたしのせいで皆が狙われているんだよね?なんか、悪いことしちゃったな。
実のところ、あたしは人間じゃない。人外のもの、人を超えたもの、バケモノと呼ばれても仕方のないもの。この体もイメージで創り出したまがい物。今の仲間とも、召喚による『契約』で行動を共にしているだけ。『契約』も半ば遊び半分だったっていうのに――
「何仲間意識全開になってんだろ、あたし」
――彼らがいつの間にかとても大事な存在になってた。あたしの心の奥底に根付いてる本能、「全てを滅ぼす」こと。それにあたしは逆らえないし、背くつもりはない。けど、何年も一緒に馬鹿騒ぎしてたアイツらだけは、滅ぼさずにずっと残しておきたいと思った…
「ああ、もう!感傷浸ってる場合じゃないってのに!!」
物思いなんて耽ってる場合なんかじゃない。あたしは“バケモノらしく”、一旦自分の世界に戻ることにした。ほとぼり冷めたころにひょっこり顔出せばそれで大丈――
――見付けたぞ…バケモノ……
「っ!!」
凄まじい殺意があたしを包み込んだ……。それは目の前の闇から――二つの瞳がこちらに向けられていた。
…無機的な瞳なんて間違っていた。これは血に飢えた獣の目――いや、獣のほうがまだ穏やかな目だ。以前、仲間達とドラゴンを怒らせて追いかけ回されて散々な目に遭ったけど、今ならこれよりましだと断言できる。
(動……け…。動かなきゃ……逃げなきゃ…)
……体が動かない。あたしは完全に飲まれていた。あたし達の種族は人間の負の感情を栄養とするために人間と契約を交わすけど、こいつの負の感情だけは誰も栄養にはできないと思う。こんな濃密で、さらにあたし達にのみ注がれる負の感情なんて。
いつの間にか少年があたしの目の前にいて、あたしの首に手を当てていた。氷のような手だった……。そして口の端をつり上げて、悦ぶように何かを言った……
〈冥魔(ヘルズ)……破砕掌(クラッシュ)〉
まがい物のあたしの体は砕け散った後、虚空へ消えていった……。実際にあたしが感じた数分間はほんの一瞬でしかなくて、「死の一瞬は時間が引き延ばされる」という、あたしが全く信じてなかった迷信のようなものを、あたしは身をもって知ることになってしまった……
****
「おや。帰ってきたか、ゼブル」
「ああ、はい。丁度帰ってきたところです」
「今回は随分と長い旅だったな」
「ええ、ちょっと隣のスペリオルまで遠出しましてね」
「何ぃ!?スペリオル!?お前、どんだけ旅すりゃ気が済むんだよ!」
「これも全て、知識の収集の為ですよ。それに、僕の生き甲斐なんです」
ここは、フロート・シティ。フロート公国の首都だけあり、多くの人々が日々の平和を望みながら日常を織りなしている。どこを見ても笑顔に溢れている街。そんな中、俺は明らかにここに居ていい人間ではないことだけはよく分かった……
「あ、ゼブルが帰ってきたー!」
「ゼブルだー、ゼブルゼブル〜」
「こら、ちゃんと“さん”を付けなさい!あ……お、お久しぶりですね、ゼブルさん。あ、あのっ!長旅で疲れているとおもいますのでっ、あと、うちの弟たちがお世話になってるので…そ、その!夕飯でも家――」
声のする方に目を向けると隣人達がいた。俺の所によく来るアッシュとレイミ、そしてこいつらの姉の――確かネーナと言ったはずだ。
「それよりもゼブル、あの本手に入った〜?」
「手に入った〜?ゼブルゼブルぅ〜」
「こら!アッシュ!人の話を邪魔しないの!レイミはちゃんと“さん”をつけなさい!!」
「だってねーちゃんどもってばっかで話進ねーしぃ、それに恋する乙女はよそでやって欲しいよなー」
「レイミもそーおもうー」
「なっ!!?ちょ、ちょっと違うってば!!ゼブルさんに誤解されるようなこと言わないでよ!!」
「ねーちゃん顔真っ赤〜。単純〜」
「真っ赤〜。単純〜」
「も、もう怒った……アッシュ!レイミ!覚悟なさい!!」
「ねーちゃんが怒った〜、逃〜げろ〜」
「逃ぃ〜げろ〜」
「では、今夜はご厄介になりますよ。アッシュのすきな本が手に入りましたし、それにもうペコペコですしね」
仲良く追いかけ合う姉弟を見て思う。
(……眩しいな)
家族……か……。俺にはもう縁のない無いモノだ……
****
「はい、どうぞ」
「わぁ、ありがとう、ゼブル!!」
「すごいね、さすが“かしほんやさん”」
「いや、大したことじゃないよ」
俺のこの街での立場は貸本屋となっている。
この国の首都であるフロート・シティにも、一応国立の図書館の様なものが存在している。しかしそれが十全に機能しているかといえば、そうではない。ある程度は一般開放こそしているものの、一部の人間しか閲覧を許されない蔵書はかなりの数に及ぶ。モンスターが跋扈し、戦争の爪痕が未だ残る今日だ。フロートの戦争に関わる史実、つい最近まで戦争していたガルス、広大な森を抜けなければいけないスペリオルで発行された本は置かれていない。そこで脚光を浴びるのが貸本屋というわけだ。
単なる好事家が始めたのがきっかけの貸本屋。個人所有であるから蔵書数・蔵書の系統ともに偏りこそあるものの、好事家の個人所有だけあって一般市場ではお目にかかれない本や、国の都合が悪いばかりに発禁処分をうけた本が生き残っている。特に、俺の所は持ち合わせの少ない子供も配慮して料金は格安、そして隣国によく遠出するので本来なら読めそうにない外国の本も読めることもあり、結構な盛況ぶりを出している。今のところ、留守中に蔵書が盗難に遭ったり他の貸本屋からの妨害が無いのも、俺がよく留守にすることが原因となっている。その間は余所の店が賑わうからだ。
「ハウリィ・ポゥタの新作読みたかったんだよなー」
「レイミもレイミもー!!」
「ほら、ケンカしないようにね」
「うい」
「はーい」
仲の良い兄妹の声を聞きながら、俺はふと乾いた笑み浮かべていた……
「……俺も随分演技が上手くなったものだな」
「え?何か言いました?ゼブルさん」
「いえ、ただの独り言です」
(自嘲はこの程度にしておくか……)
ただゆっくりと時が流れる様を、俺は穏やかな笑顔を作りながら感じていく……。
*****
そして、その夜。
「準備はこれでいいだろう」
草木も眠る丑三時、フロート・シティの校外の岩場に俺はいた。以前は採石所として重用されていたが、作業員の一人が精霊魔術――確か、〈風撃突貫槍(エアクラッシュ・ジャベリン)〉を暴発させて地盤・岩盤が崩落。犠牲者が出ないうちに引き払われた場所だ。俺がそんなところで何をやっているのか、それは間もなく分かるだろう。
俺は足下に描かれた奇怪な文様の前で足を止める。この地面に描かれた模様は〈魔召喚陣(デモン・サークル)〉。裏社会で生まれ、発展している〈召喚術〉で用いられる召喚陣の一つだ。俺はその陣の前で必要な呪文を唱え、それに鼓動するように陣から鈍い光りが段々と溢れていった…。そして、俺は呪文の終詩をつむぐ。
――〈魔族召喚(サモン・デモン)〉
そして、〈魔召喚陣〉から俺の最も忌み嫌うもの、汚らわしいバケモノ――魔族が姿を現した。
『ギィ…』
『おやおや、まさかこの私が召喚されてしまうとは……』
現れたのはいかにもバケモノ然とした――ステレオタイプの悪魔とも言えるような最下級魔族のエビル・デーモン5・6匹と、一匹だけ混じった人語を解する異形がいる。
『あなたですか?私を召喚したのは』
なんとも中途半端な姿だった。人間の体に猛禽の足、そして両腕は翼となっている。それだけならば伝承に出てくるハーピィそのものだが、人型の部分はのっぺりとした黒子そのもので翼は蠅の羽根にしか見えない。それで声だけは涼やかなのだから余計に出鱈目なのが際だっていた。
『あなたですか?私を召喚したのは』
――ああ、そうさ。出来損ないのバケモノに俺は答えてやった。
『では、あなたは私に何を望みますか?例え滅ぼす人間であろうと、私はあなたの召喚と望みに答えましょう』
随分と律儀なバケモノが出たものだな……。俺の望み?なら、答えてやるよ――
「とっとと死んでくれ」
『は……?』
限りなく速やかにな……
――〈冥魔破砕掌(ヘルズ・クラッシュ)〉
『グ…ァ…』
『ギィ……?ギギッ!!』
砕け散ったバケモノの様を見て、さっきまで立ちつくしていたエビル・デーモン達が色めき立ち、臨戦態勢になっていく。どうやら俺を危険なものだと認識し、倒そうとしているようだ。……お前達にも少しは生存本能や危機感があるようだな。魔界術の余波で生まれるだけの存在だというのに……
「まあいい、死ね…」
黒い光を放つ諸手で、俺は手近な2匹から順に殺していった…
****
たった数十分の出来事だった。ものの数秒で残りを消した俺は更に〈魔族召喚〉を唱え、そして消していく。……狂っているなぁ、俺は。本来なら使役して戦力とするはずの召喚術。それを殺す対象を呼び寄せる為に使うなんて……。召喚、殺す、召喚、殺す、召喚、殺す、召喚、殺す――魔法力が尽きてしまいそうな程の詠唱の連続が続けられる。
魔族を殺すことは既に俺の日課となっていた。魔族の存在の噂を聞けば、例え国外であろうと足を運び、そして確実に仕留めてきた。フロート・シティに住んでいるのもこの大陸の中央の国、その首都だからこその情報収集のしやすさからだ。国外の本を手に入れて来るのも単に表の――変わり者の一般人としての顔を作るためだけのものでしかない。
『テメェか?俺らをぶっ殺して廻っている人間ってのはぁ』
(飛んで火に入る夏の虫だな……)
俺の目の前に新しい魔族が一匹現れた。その魔族は随分と奇妙な姿をだった。革製の踵に金具の付いたブーツに、腰には空っぽの何かを納めるホルスター。旅塵で汚れたようなマントを羽織り、そして唾広の古ぼけた帽子を被っている。
『随分と冷めた目ぇしてるじゃねえか、「僕ちん、不幸で不幸でたまないんでちゅー」とか言いたそうだなぁ!オイ!!』
随分と下卑た言葉を喋るやつだな……どうやらこいつは頭が弱いようだ。
『あぁー?なぁんだこのムッツリは?話と全然違うじゃねぇかよ』
一々五月蠅いやつだな。これの話を聞いていては頭が腐りそうだと思い、俺は口の中で言葉を転がしながら詠唱を始めた。
『俺達に対して殺意ギラギラって聞いてたからこの“魔弾”のバレット様が直々に相手してやろうと思ったのによー。あの仮面野郎、ガセネタ掴ませやがったな?』
「っ!?」
仮面……だと……!?
『お!食いついたか?食いついちゃったか?』
俺の変化に気づいて馬鹿が愉しげに笑っている。本当なら完成間際だった〈冥魔破砕掌〉で即座にあの世に送りたい所だが、仮面の名前を聞いて詠唱が途切れてしまった。
『やっぱ仮面野郎にぞっこんなんだなぁ、「食べ残し」ちゃんは?』
「食べ残し……だと……?」
……コイツは今何といった?
『あぁ?なんだお前知らなかったのか?じゃあ教えてやるよ、バレット先生の特別授業だ。科目は歴史な』
俺の反応を確かめるように馬鹿は語りだした。
『今から10年前のことになるが、あれは昨日のことのようにおぼえているぜぇ。仮面野郎ってのはよ、とにかくマメな魔族様なんだよ。ヤツはその都度その都度、不幸や絶望をプレゼントする相手に合わせてやり口を変えてく演出家だ。《漆黒の王(ブラック・スター)》様や上の《魔王の翼(デビル・ウィング)》みたく一気に滅ぼそうなんて横着はしねぇ。
そんな仮面野郎がある日、人間の冒険者相手に負けてやったんだとよ。やっとの思いで仮面野郎を倒したと思ったら、仮面野郎の分離体・総勢200体に絶望しながらその冒険者はくたばっちまったんだとよ。
それで、だ。冒険者相手に負けさせた分離体の補給に、みごとお前の村が選ばれたらしいぜ。お前が残ったのはその時点で分離体の分ができたからだとよ。それにあいつは、『戦時に首都を食い散らかしては戦争の勝敗が決まってしまうじゃないですか。そんな無粋なことは私の主義に反しますので、あの村にしました。丁度国境付近の山ですからそこに割く駐留軍人もへりますし、なにより防衛箇所が減って助かると思ったんですよ』だとさ!!人間の事情までよく知ってるじゃねぇか!!なんて慎み深――』
「もういい、黙れ……」
『あ?』
「黙れと言ったんだ……」
『あ!もしかしてプッツンかなぁ〜?』
「お前の声をこれ以上聞きたくないだけだ。耳が腐る」
『ああ!?テメェ何チョーシこいてんだぁ!!』
激昂した馬鹿が〈闇の矢(ダーク・アロー)〉を放ってきたが、俺は難なくかわした。
『ほぉ、なかなかやるな。なら、これでどうだ?』
馬鹿の周囲には数十・数百にも及ぶ〈闇の矢〉が現れ、今にも襲いかかろうとしていた。……なるほどな、“魔弾”なんて時代錯誤のような通称を名乗ったのはこれが理由か。だが、今の俺には正直、そんなものどうでもよかった。
『死にやがれぇええええええええ!!』
馬鹿が矢を乱れ撃ってくる……
(お遊びの……補給…か……)
********
『ど、どうなってんだ……コイツは……?』
(俺の……村…)
〈闇の矢〉の掃射をかわしながら、俺はぼんやりと考えていた。何やら馬鹿が驚いている様だが、〈冥魔破砕掌〉でクロスレンジの戦闘が主流の俺にはできて当然であり、バケモノじみた反応速度は持って生まれた才能が開花しただけのこと。一斉射撃でなく掃射である以上、矢と矢の隙間をすり抜け、避けられないものは辺りの石で弾けばいい。
(俺の……家族…)
『ありえねぇ!!こんなのありえねぇ!!』
(それらの……死んだ理由……。俺だけ生き残った……理由…)
『――!!――!?――……!!』
もう馬鹿の言葉など耳に入ってなかった。10年前のあの頃が脳裏に浮かぶ……
――『おめでとう!!君は遂に、念願の声を手に入れた』
(くだらない……)
仮面の祝福が頭の中でエコーを続ける。
――仮面と弱かった自分。最も俺が嫌うモノ。
仮面を殺せば、それでいいのか?
――違う。仮面を殺したところで何も還らない。殺しただけでは終わらない…
ならば、弱かった自分を?
――それも違う。過去を消すことはできない。そして過去を忘れるのは逃げでしかない…
壊したいのは、どれだ?
――どちらでもあって、どちらでもない。それだけでは収まらない…
おまえは何をしたい?
――焼きたい。俺の村が燃えた時のように、熱く激しい焔で焼きたい…
何を焼く?仮面?魔族?
――全てだ…
全て…
――腐りきった魔族も、愚図な偽善者の神族も、そしてそれらを生み出した界王(ワイズマン)も――
「――そして、それらを認めるこの世界の有り様も、全てだ!!」
『っ!?』
俺は俺が大嫌いな世界を睨みつけた…
「……消えろ!!」
****
この日、世界にまた一つ、新たな魔術が生を受けた…
「俺は、魔族を認めない……」
それは、まだ名も無き黒い焔…
「俺は、神族を認めない……」
使い手の心に宿る、禍々しき憎悪の投影…
「そして、それらを創った界王――それを認める世界を認めない……」
使い手の目に映る世界を焼き尽くす焔…
「全てだ……」
下級魔族・バレットを刹那に焼き滅ぼし、そして岩をも溶かしながら燃え続ける…
「全て……全て焼き尽くしてやる!!」
使い手の心は満たされることを知らず、そして焔は夜明けまで燃え続けていた…
*****
フロート・シティから遠く離れたどこか。そこに一体の魔族がいた。
『ふふふふふふ……』
戯曲に用いられる笑顔をつけた仮面、そしてそれから漆黒のマント垂れ下がっているだけの簡素な姿。
『ご冥福をお祈りしますよ、バレットさん』
それはつい先程ゼブルに灼き殺された魔族に対し、白々しいまでに明るい追悼の言葉を言った。
『いえ、ね。私が直に出ていったところで、彼は頭に血が上って話し合いの場など設けようがないのですよ。そういった意味では、私の伝言役を務めて頂き、本当にありがとうございました』
だれもいない虚空に対し、仮面は静かに礼をする。
『しかし、あの状況で新たな魔術を完成させるとは予想外でしたね』
一息おいて、仮面の口がつり上がり、さらに大きな笑顔となった。
『人間は、美しい……』
熱っぽい声で仮面は続ける。
『本能に縛られ、画一的な行動しかとれない我ら、そして神族と違い、人間はなぜこんなにも美しいのだろうか?私が同じ絶望を与えたとしても、彼らは同じではない。むせび泣く者、現実から目をそらして発狂する者、諦め人生を全うする者、そして!!そして一番美しいのはこの私に立ち向かう者!! 自らの命・守るべき者・自らの信念、たとえ敵わないと思っていようとも、私に戦いを挑む彼らの命の輝きは、彼らから迸るあれは何と眩いことか……。そして所詮私は、彼らの輝きに寄りつく羽虫でしかないのだろう』
仮面の言葉が途切れ、そしてその姿が変わっていく。黒のマントを羽織り、仮面を付けた人影が現れた。仮面へと手が伸ばされ、その素顔が明らかになる。その素顔とは――
『私は、人間を愛している。彼らに心奪われている!!嗚呼、私の中にはもう同胞達のようなくだらない本能は残っていない……。全ては彼らへの愛なのだ!!愛故に、私は彼らに絶望という名の試練を与えよう!!愛故に、私は彼らの手に掛かり命を全うしよう!!愛故に、私は彼らの命が輝く為の“悪”となろう!!』
――10年前のゼブルと全く同じ顔だった…
――――管理人からのコメント
投稿、ありがとうございます。しかしやはりダークな……(笑)。
本編の設定がしっかり使われていたり、続き物だったり、最初、魔族を語り部にしていたり、仮面の魔族の素顔が……だったりと、色々楽しく読ませてもらいました。
しかし、呪文とかの設定が使われていると、やはり嬉しくなるものですね。プロでもないのにこういうことを言うのはアレかもしれませんが、やっぱり原作者としては本当に嬉しいです。二次創作。
本当、ニヤニヤしながら読んでしまいましたよ。内容はダークであっても(笑)。
今後の作品も期待していますね。
それでは。
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